海のふた



■よしもとばなな

■ロッキン・オン
■2004年6月発行
■1500円(税別)


去年の夏に買って、読まずに放っておいた本。
今読んでよかった。
これが、真冬のさなかだったら、これほど夢中になって読むことはなかったろう。

さびれていく西伊豆の観光地で、個性的なかき氷屋を営むまり。
どぎつい色のシロップではなく、試行錯誤してつくられたきび砂糖のシロップ。
そのシロップだけをかけた「氷すい」、みかんの濃縮ジュースを加えた「氷みかん」、
南の島から取り寄せたジュースを使っている「氷パッションフルーツ」、
抹茶とあずきの「氷宇治金時」の4つのみで構成されたメニュー。
そしてなぜかエスプレッソ。
そんなかき氷屋さんがこの世にあるのなら、ぜひ食べに行きたい!
エスプレッソが、ゲートボール帰りのおじいさんたちの流行になったというのも
笑った。
そして、からだの右半分が幼いころのやけどの痕でまだらに真っ黒なはじめちゃん。
そんな彼女との、友情というよりは、人間模様。

よしもとばななさんは、日記やエッセイに毎年避暑に訪れる土肥がさびれて
ゆくことを心から惜しんでいることを書いていた。
だから、読み始めてすぐ、土肥のことだと思い至った。
さびれていく要因が、つまんないことであることの無念さが繰り返し書かれている。
そして、上質の暮らしとはどういういことであるかと考えさせられる。
ありふれた言い方になってしまうけれど、何気ない毎日をていねいに生きるということが
大切だと、いろんな場面に表されている。

あくせく毎日を生きていて、つかれちゃった人に読んでもらいたい一冊。

Posted: 土 - 9月 10, 2005 at 10:46 午前              

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