スーツ


あれはもう、今から18年ぐらい前のことでしょうか。

モノクロギターくん は、夫の後輩です。
水戸に住んでいた頃、近所に住んでいました。
彼が大学５年生になった頃、「就職活動にスーツが必要」ってんで、
一緒に青山（地名ではなくお店の名前です）に行ったことがあります。
スーツを選んだら、当然のごとくワイシャツやネクタイも勧められました。
彼は勧められるままにうなずいているので、私は内心ちょっと驚いていました。
そして店員さんが「では、少々お待ちください」と離れて行ったとき、私は彼に聞きました。
「そんなに買って大丈夫なの？」
すると彼は私の方を向いて泣きそうな顔でこう答えたのです。

「どうしよう？」

私は慌てて、遊びに使うお金じゃないし必要なものなんだから、お母さんに送金してもらったら？
と言いました。
彼は「そうします」と答え、問題は解決しました。

彼は大学卒業後、上京し、肉体労働の仕事やヴァージンメガストアの店員さんの仕事を
したりしていました。
玄関もトイレももちろんシャワーも共同の、ボロアパートに住んでいて、
私は何度か泊まりにいきました。楽しかったな。

ある日「実家に戻ります」と連絡が来て、継がないと思われていたご実家のお仕事を継ぐことに
なったようでした。

それから数年経って、めっちゃ可愛いお嫁さんをもらい、ふたりのお子さんに恵まれました。
結婚式のときは、お嫁さんがあまりにも可愛いので、みなで「よかったよかった」と
言い合いました。

そんな彼が、オーダーメイドのスーツをつくった と聞き、時は経ったのだなあ、
としみじみ思ったことだよ。
東京の片隅の、あんなボロアパートに住んでた頃、こんなに立派な未来が待っているなんて
きみも思っていなかったよね？

Posted: 水 - 7月 12, 2006 at 09:06 午前              

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