冬の終わりは沈丁花の匂い
春の始まり、というよりも冬の終わりが好きだ。
雨上がりの夜、窓を開けると沈丁花の匂いがするような。
冬の終わりには、少女は背丈が伸び、女はひとつ心の痛みを知る。そんな魔力が、冬の終わりには秘められているような気がする。
凍ったかたい地面から、あんなにやわらかであざやかな若芽が生えるんだもの、そりゃ魔力もあるでしょう。
ローティーンの頃、私はこの「冬の終わり」という不思議な季節にめろめろに酔っぱらっていた。コドモだったから、しかたがない。
恋をしていた人は、11歳としうえだった。
とうてい届かない想いであったが、想像(というか妄想?)を膨らませるのにはじゅうぶんな状況で、ファナティックな部分に磨きがかかった。
それが良かったのか悪いことだったのか、今でもわからない。
今の私。
不眠症の少年を胸に抱いて眠るような慈愛に満ちた女。
清楚なキモノの下にガーターベルトをつけちゃうような小悪魔。
初夏には梅干しを漬けて、ケーキも焼く笑顔の奥さん。
ボーイズ2メンを聴くと思わず躍っちゃうばかでファンキーな女。
まるでカオスだ。
人生なんて、シャレと冗談で生きていけばいい。
大切なものさえ見失わなければ。