私にとってキッチンは魔法の場所だ。
疲れてるな、というときとか、ダメだ死ぬというくらい頭痛がしても、シンクを前にして立つと、すっ。と背筋が伸び、頭がしゃんとする。
料理を始めると、心は真空になる。
無心で野菜を刻み、肉を炒め、魚のうろこを取り、手が空くとざるやまな板を洗う。
あるときは、チョコレートを溶かし、卵を泡立て、小麦粉をふるいにかける。
主婦(じゃないけど)のお総菜の域を出ない料理だけど、私にとってこの能力は神様からのささやかなギフトだと思う。
雑誌のグラビアを飾ることはないけれど、おいしいね。と言って食べてくれる人が、私のヘヴンズ・キッチンのゲストだ。